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17- D- 0236
201 7 年 6 月 2 2 日
産業ガ
ス
大手各社の 17/ 3 期決算の
注目点
産業ガス大手 2 社(エア・ウォーター、大陽日酸)の 17/ 3 期決算および 18/ 3 期業績予想を踏まえ、株式 会社日本格付研究所(J C R)の現況に関する認識と格付上の注目点を整理した。
1. 業界動向
日本産業・医療ガス協会の統計によると、16 年度のエアセパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の国 内販売数量は、前年度比で 0. 7%の増加となった。16 年度上半期までは前年同期比で 0. 8%の減少となって いたが、エレクトロニクス業界の生産活動が回復してきたことなどを背景に 6年ぶりに増加となった。ただ、 中長期的な国内産業ガスの需要拡大が見込みにくいという見方に変化はない。主要ユーザー業界では、エチ レンセンターの再編や高炉の集約など、国内生産の縮小が目立つものとなっている。
産業ガスで需要が最も多いエアセパレートガスは空気を深冷分離して製造されるため、極めて大きな電力 を必要とする。東日本大震災以降、電力料金の上昇が収益の圧迫要因となっていた。ただ、15 年以降は原油 価格が下落したことに伴い電力コストが低下し、16/ 3 期に続き、17/ 3 期も収益面のプラス要因となった。
大手各社は中長期的な成長に向け、海外事業の強化や周辺事業の拡大といった成長戦略を推進している。 エア・ウォーターは産業ガスやケミカルなどの産業系のほか、医療、L P ガス、農業・食品といった非産業 系の事業領域を拡大。17/ 3 期は農業・食品分野でマルハニチロ北日本の十勝工場などを、医療分野で衛生材 料などを手掛ける川本産業を買収した。一方、大陽日酸は産業ガスを中心に、米国・アジアの事業地域拡大 を推進している。17/ 3 期は仏A ir L iquide の米国での産業ガス事業の一部(16 年9 月)および豪州の産業ガ ス会社(16 年 12 月)を買収した。このうち、米国の案件は 16 年 5 月の A ir L iquide による米 A irgas の買収 を受けたもので、独占禁止法回避のため、A ir L iquide から事業分割されたものである。当該案件の買収金額 は 774 億円で、大陽日酸の買収案件としては過去最大となった。近年、海外ではこのような地域をまたいだ 業界再編の動きが見られ、17 年6 月には独 L inde と米 Praxairが対等合併に関する最終合意を締結している。 こうしたグローバルでの再編は世界的上位企業の規模が拡大することになるが、今後、前述の米国事業のよ うな買収案件が発生する可能性も有する。
2. 決算動向
成長戦略の取り組みで、2 社の業績は順調に拡大している。個社別に見ると、エア・ウォーターの営業利 益は 413 億となり、4 期連続で過去最高益となった。経常利益は 16/ 3 期にケミカル関連の持分法適用関連会 社における減損処理などで 13 期ぶりの減益となったが、17/ 3 期に再度、過去最高益を更新した。セグメン ト別利益(経常利益)では産業系が前期比 62 億円増、非産業系が同12 億円増と両分野とも増益になったが、 特にケミカル関連の赤字が大幅に縮小したことが大きなプラス要因となった。一方、大陽日酸のコア営業利 益(17/ 3 期より国際会計基準)は547 億円(同基準ベースの16/ 3 期コア営業利益は474 億円)となった。 過年度業績との単純比較は出来ないが、実質的には過去最高の収益であったと見られる(16/ 3 期営業利益は 日本基準で過去最高益)。セグメント別利益(コア営業利益)では全事業が増益を確保。産業ガス事業は内 外ともに堅調に推移したほか、サーモス他事業も好調を維持し、収益のサポート材料となった。特に米国ガ スが前期比28 億円増、アジア・オセアニアガスが同21 億円増となっており、円高影響を受ける中ではあっ たが、これまでの M&A の成果が収益を押し上げた。
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を見ると、2社ともに設備投資額が減少し、投融資額が増えている。17/ 3期のエア・ウォーターの設備投資 額は 405 億円(前期比 16 億円減)、投融資額(M&A投資)は 247 億円(同 102 億円増)。大陽日酸の設備投 資額は 437 億円(同 98 億円減)、投融資額は 1, 020 億円(同 765 億円増)となった。一方、自己資本(大陽 日酸は親会社の所有者に帰属する持分)は好業績を背景に拡充が進んだ。エア・ウォーターは 16/ 3 期末の 2, 347 億円から 17/ 3 期末は 2, 559 億円、大陽日酸は 16/ 3 期末の 3, 204 億円から 17/ 3 期は 3, 515 億円に増加 した。この結果、17/ 3 期末の DE R は、エア・ウォーターが 0. 59 倍(16/ 3 期末 0. 60 倍)、大陽日酸が 1. 00 倍 (同 0.81 倍)となった。大陽日酸はM&A の負担で有利子負債が大幅に増加したものの、財務バランスは適 切な範囲でコントロールされた。
3. 決算に
お
け
る
格付上の
注目点
18/ 3 期の業績見通しは 2 社ともに成長軌道を維持できる見通しとなっている。エア・ウォーターは営業 利益、経常利益ともに過去最高益を更新する計画である。セグメント別利益(経常利益/ 一部セグメントの の変更有り)では産業系が前期比17 億円増、非産業系が同 18 億円増を見込んでいる。一方、大陽日酸も好 業績だった 17/ 3 期を上回る見通し。国内ガス事業とサーモス他事業は減益の予想だが、海外ガスの収益拡 大がプラス要因となる計画である。2 社共通となる国内産業ガス事業では、主要ユーザー業界の生産活動や 電力コストの状況が重要なポイントとなる。底堅い国内景気を背景に、18/ 3 期も産業ガス需要は堅調さを維 持できる可能性が高いが、エレクトロニクスでは好調な半導体関連産業の継続性、化学では北米のエタンク ラッカーの稼働増加による国内エチレンセンターの稼働低下など、期後半に向けては不透明な要素もある。 電力コストについては、足元での原油価格は 40 ドル台半ばで推移しており、この水準が継続した場合は収 益に対して大きなマイナス影響とはならないと考えられる。ただ、同価格の動向は地政学リスクを始めとし て様々な要因によって左右されるため、楽観的な見通しは持ちにくい。産業ガスは製造業の中でも最たる電 力多消費型事業であることから、特に電力コストの動向には注視していく必要がある。一方、海外産業ガス 事業では、大陽日酸が米国におけるグループ会社のプレゼンスの向上を背景に、同国でのオンサイト案件の 受注が増加しており、17 年から稼働開始の案件が出てくる。オンサイト事業は大口ユーザーとの安定した取 引だけでなく、ローリーなどによる周辺地域への自社ガス販売の拡大でも有力なツールとなる。このため、 スムーズなスタートアップを行えるかが、注目点となる。
財務面では引き続き、キャッシュフローと投資のバランスが適正に維持されているかが注目点となる。エ ア・ウォーターでは 17/ 3 期から開始した中期経営計画(17/ 3 期∼19/ 3 期)において、2, 400 億円の投資 (設備投資、M&A 投資、戦略投資の合計)を計画(前 3 ヵ年累計比 1, 051億円増)。18/ 3 期の設備投資は 495 億円(前期比89 億円増)、M&A投資は200 億円(同 47 億円減)となる見込み。また、大陽日酸も中期 経営計画(18/ 3 期∼21/ 3 期)では、営業キャッシュフロー総額3, 250 億円に対し、3, 400 億円の投資を計画。 18/ 3 期の設備投資は 660 億円(前期比 222 億円増)となっている。これらに沿った投資支出であれば、いず れも自己資金で対応可能と考えられる。ただし、持続的な成長に向け、今後も積極的な M&A が実施される と考えられることから、案件内容やその規模には留意する必要がある。
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(図表)産業ガス大手 2 社の連結業績・財務 (単位:億円、%)
【日本基準】 売上高 営業利益 経常利益 最終利益 有利子負債 自己資本 総資産 DER
自己資本 比率
エア・ウォーター 16/ 3 期 6, 606 395 350 201 1, 409 2, 347 5, 758 0. 60 40. 8
(4088) 17/ 3 期 6, 705 413 412 223 1, 517 2, 559 6, 291 0. 59 40. 7
18/ 3 予 7, 600 440 440 240 − − − − −
【国際会計基準】 売上収益
コア 営業利益
営業利益 最終利益 有利子負債
親会社所有者
帰属持分
資産合計 DER
親会社所有者
帰属持分比率
大陽日酸 16/ 3 期 5, 944 474 489 290 2, 593 3, 204 7, 875 0. 81 40. 7
(4091) 17/ 3 期 5, 815 547 536 347 3, 525 3, 515 9, 242 1. 00 38. 0
18/ 3 予 6, 200 565 570 345 − − − − −
(出所:各社決算資料より J C R 作成)
※ 1 大陽日酸は 17/ 3 期より国際会計基準適用。上記 16/ 3 期は同基準ベース。
※ 2 最終利益は【日本基準】親会社株主に帰属する当期純利益、【国際会計基準】親会社の所有者に帰属する当期利益
※ 3 有利子負債は借入金、社債の合計
【参考】
発行体:エア・ウォーター株式会社
長期発行体格付:A + 見通し:安定的
発行体:大陽日酸株式会社
長期発行体格付:A + 見通し:安定的
■留意事項
本文書に記載された情報は、J C Rが、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、J C Rは、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、 的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、J C Rは、当該情報の誤り、遺漏、また は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。J C R は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、 金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因 のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、J C Rの格付は意見の表明であ って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも のでもありません。J C Rの格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として 発行体より手数料をいただいて行っております。J C Rの格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、J C Rが保有しています。J C Rの格付データ を含め、本文書の一部または全部を問わず、J C R に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
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